私は、持ち株会社嘉穂無線ホールディングスの傘下にあるホームセンター事業のグッデイの3代目の社長です。もともとは電気部品の販売を主としていましたが、時代の変化に合わせて、現在はグッデイが主な事業収益となっています。3代目として、会社の存続と成長をどうやって実現していくのか、悩む日々でした。

An English translation has been provided by the DLC.

私が社長になった当初、グッデイはメールアドレスもウェブサイトもなく、ITやテクノロジーが全く活用されていない、アナログな企業でした。今では、毎年二けた成長を達成し、競合他社よりも高い成長率を誇る優良企業となっています。DXの先端企業として業界からも注目される企業となり、従業員のモチベーションも向上、売り上げも向上という好循環が生れています。

 

このような成果を上げるために、データを重んじたコミュニケーションが大いに役立ったと実感しています。今ではデータ分析は経営戦略を策定するうえで欠かせないものとなっています。

 

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データをツールとして共通理解を得る

私は文系出身ですが、商社に勤めていた経験から、モノではなくデータや数字を見て事業の状況を判断するスキルを身につけていました。Tableauを使い始めたころから、自ら統計分析やPythonパイソンなども勉強しました。データが提供する価値や重要性を充分に理解し、リーダー自らが高いデータリテラシーを備えることが重要と考えています。

 

グッデイにおけるデータ利活用ですが、2015年まで、会社のPOSデータは業務システムの中に蓄積されてはいましたが、エクセルで集計するのみでるしかなく、、多角的な分析ができる状態ではなく、業務改革に手が付けられない状況でした。また会議で取り上げられるデータは、各事業や店舗の責任者のバイアスが入った不正確なもので、客観的な正しいデータが会議に提示されることは余りありませんでした。また定型的な帳票データのみだったため、異なる角度からの切り口で見たり、全体の傾向を的確に把握したりすることが難しい状況にありました。

そのような状況を一変したのが、Tableauの導入です。TableauでPOSデータを可視化することで多くのことが見えてきました。現在は、200GB、3億行にのぼる店別/日別のデータをTableauで分析し、ダッシュボードも3千個以上作成されています。

Tableauのデータを見ることで、より具体的な施策や提案が可能になりました。データに基づいた論理的な説明や提案を示すことで、従業員が動き、業務改革が進みました。データを使って理論を実践に落とし込み、人の意識を変えることに成功したのです。数値をもとにした根拠が議論を明確かつわかりやすくし、コミュニケーションに誤解や勘違いが生じることを防ぎ、仕事が円滑に進むようになりました。データは優れたコミュニケーションツールであると確信しています。

 

データ分析の成功例が従業員の意識を変える

人口減少の中でも2015年からグッデイの売り上げは伸び続けています。昨年は新型コロナウィルスの影響で業界全体がプラス成長となりましたが、グッデイは業界平均より高い成長率を記録しています。

 

以前は予算制度がなく、月次を閉めるまで今月の収支がいくらかわかりませんでした。現在は週次会議で、週次や月次で売り上げ状況がわかり、予算に対する分析なども可能となりました。細かい要素を入力してもらっているため、損益の予測も実際の結果とほぼ同じであり、来期の見通しが立ち、経営判断を迅速かつ的確に行えるようになりました。

 

例えば、週次のPOSデータを全店舗で共有することで、売り上げを伸ばしています。ABC分析で売れている商品の一覧を作成しています。以前は、どの製品が一番売れているのか把握できていませんでした。現場からの回答は、その時の感触や勘など感覚に頼ったもので、客観的なデータに裏付けられたものではありませんでした。しかしTableauを導入してからは、事実となるデータを共有することが可能になりました。データがあれば、回答者が誰であれ事実は一つです。

成功例として、ある店舗で売れていたビオラやパンジー商品を全店舗に横展開して、売り上げを伸ばした例があります。売れ筋商品がわかれば、仕入れや在庫を適切に管理することで売り上げ向上に結び付きます。また年に10店舗1割の店舗を改装しますが、その際に、製品配置や売り上げ上位製品などの蓄積した細かなノウハウを生かして20~30%売り上げを伸ばしています。データ分析により勝ちパターンがつかめているのです。これは経営的にも大きな競争優位性となっています。

まさにデータに基づく施策や取り組みが売り上げを伸ばしているので、当社はデータドリブンな組織になっているといってもいいかと思っています。

 

日本一のデータドリブン企業に向けて人材育成

Tableauを導入したことで、Tableauに詳しいアンバサダーレベルの人たちが出てきました。これは会社にとって大きな財産です。人事部に専任の教育担当者を置き、GooDay Data Academyという社内教育を、若手社員を対象に「日本一で一番」データを使いこなすデータドリブン企業を目指して、実施しています。数字を見るのが楽しいといういわゆるデータピープルが育ってきています。ダッシュボードは現在、34個に増えています。せっかく財務諸表やデータがあっても理解できなければ次のアクションに結び付かないため、社員のITリテラシーの向上に取り組んでいます。生産性の向上、コミュニケーション齟齬の解消、意思決定の迅速化と質の向上という価値を提供するITリテラシーは、当社の差別化点となり、競争優位性をもたらします。その結果、以前は2名しかいなかったエンジニアが、今では10倍の20名に増えており、クラウドやアプリケーションの仕組みも自社で構築、作成できるようになりました。会社の成長には優秀な人材が必要ですが、成長できる学びの機会を提供するのは、経営者の責任です。

Tableauの導入がきっかけとなって、社員のデータに対する知識が増え、意識が変わってきました。データを共通言語とすることで、データがあっても使えなかったが、可視化することでデータを見て、理解できるようになり、さらにデータリテラシーを向上することで、データをもとに意思決定できる風土が育っています。いつの間にかDXを実現していました。データの利活用が先端的な取り組みとして業界で認識され、社員のモチベーションの向上にもつながっています。


 

データが生み出した新規ビジネス

データにより将来の見通しが立つことで、新規事業やサービスなど将来のことを考えられるようになります。データ分析をやることで新しいアイデアが生まれました。Tableauの活用で蓄積したノウハウを新たなビジネスに生かし、カホエンタープライズという事業を立ち上げました。グッデイで培ったデータ活用のノウハウをもとに、経営課題の発見・解決や、経営判断のスピードアップ、最新IT技術活用の推進や導入サポートなどを提供する企業です。ウェブサイトもなかった企業が小売りと関係の全く関係のないIT活用の推進を支援する事業を始めるというのは、少し前なら想像もできなかったことです。

 

経営者の役割は、方向性を見出し、社員をそこに導くことと考えています。リーダーの声を信頼してもらうためにも客観的な事実が重要です。その事実をもとに組織運営の仕組みをつくり、社員の成長を促しながら、会社としても成長、拡大できるよう取り組んでいます。ポストコロナにおいても、人流データを含め様々な客観的なデータをもとに状況を判断し、これからも会社の発展にデータを活用していきます。